Vol.01 採用に悩む中小企業へ。キャリアをつくる学校を始めた理由
中小企業にとって、人材の採用や定着は大きな課題です。
求人を出してもなかなか人が集まらない。
せっかく採用しても、長く働いてもらうことが難しい。
そんな悩みを相談されることも、最近は多々あります。
給与や休日といった条件を整えることは、今では必須です。
でも、それだけでは足りません。
「この会社なら、これからの自分に少し期待できる。」
と思える環境をつくることも、これからの会社には必要だと考えています。
私自身も、会社員として働きながら学ぶことで、これまでとは違う仕事や役割に挑戦する機会を得てきました。
だからこそ、社員一人ひとりにも、今の仕事に必要なことだけではなく、自分自身の未来や可能性を広げるために学べる場所があってもいいのではないか。
そんな思いから今回、テオリアで新しく始めることにしたのが、キャリアをつくる学校です。
これは、会社に必要なスキルを身につけてもらうためだけの社内研修ではありません。
社員が会社のためだけではなく、まずは自分自身の未来のために学べる場所をつくりたい。
そこから、一人ひとりの新しい可能性が見つかり、それがいつか会社の新しい可能性にもつながっていけばいい。
そんな学校をつくりたいと考えています。
社員研修が「身につかない」と感じるのはなぜか。自分で学ぶこととの大きな違い
会社の研修って、なんとなく気が進まない。
そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。
正直、私自身もそうでした。
若い頃、会社から「受けるように」と言われた研修には、どこか「仕方なく参加している」という感覚がありました。
一昔前の研修には、精神力を鍛えるようなものも多く、大声で発表したり、厳しい指導を受けたりすることもありました。
今振り返ると、当時の私にとっては「学び」というより、「耐える時間」に近かったのかもしれません。
実際、研修で何を学んだのかはほとんど覚えていないのに、「つらかった」という記憶だけは残っています。
ただ、不思議なのは、私は学ぶことそのものが嫌いだったわけではないということです。
その頃の私は、「いつか何者かになりたい」という気持ちが強く、経営やマーケティングをはじめ、自分に必要だと思ったことは必死に独学していました。
自分ではあれだけ学んでいたのに、会社が用意してくれた学びの機会には、ありがたいと思うどころか、仕方なく参加していた。
なぜなのか。今でも、うまく説明できません。
でも、そこに人が学ぶうえでの大切なことがあるように思います。
自分の意思で取りにいく学びと、誰かから指示されて取り組む学び。たとえ同じことをしていても、本人にとっての意味はまったく違う。
「学ばされる」のではなく、自分で「学びたい」と思うこと。
キャリアをつくる学校を考えるうえで、この感覚はとても大切にしたいと思っています。

「このままでいいのか」と感じるのは、若手社員だけではない
仕事をしていると、ふと「このままでいいのだろうか」と感じることがあります。
それは、今の会社や仕事に大きな不満があるからとは限りません。
この仕事を続けた先に、自分はどんな働き方をしているのだろう。
どんな役割を担い、どんな生活をしているのだろう。
今の働き方の延長線上に、自分が望む未来をうまく描けない。
そんな漠然とした不安を感じることもあるのではないでしょうか。
私自身も、社会に出て初めて似た感覚を持ちました。
働き始める前は、自分でまとまったお金を稼げるようになれば、いろいろなことができるようになる。社会人になることに、どこか大きな可能性を感じていました。
ところが、最初に勤めた大企業で40代、50代の先輩や上司たちを見ているうちに、自分の将来を急に現実的に考えるようになりました。
当時の私には、先輩たちが少し疲れて見えたり、仕事を楽しんでいるように見えなかったりすることもありました。
「このまま働き続けたら、自分もいつか同じようになるのだろうか」
成長したいなんて考えはありませんでした。
ただ、この働き方の延長線上に、自分が望む未来があるようには思えなかった。
それが、経営やマーケティングなどを自分で学び始めるきっかけになりました。
当時は今のようにインターネットで簡単に学べる時代ではなかったので、本を読むことが中心でした。振り返れば、読んだ本は1000冊を超えていたと思います。
その学びが、後にWebマーケティングや新規事業など、それまで経験したことのなかった仕事につながっていきました。
そして今思うのは、キャリアについて考えるのは、決して若い社員だけではないということです。
20代には20代の「この先どうなるんだろう」があります。
30代、40代になれば、仕事や収入、役割、家族との時間など、将来はより現実的な問題になってきます。
そして、50代になっても、今の時代はこれから働く時間はまだ長く残っていると思うものです。
年齢によって問いの形が変わるだけで、「これからどう働いていくのか」を考えることは続いていきます。
そして若い社員にとっては、今いる40代、50代の先輩や上司の姿そのものが、自分の将来を想像する材料にもなります。
若手のこれからを考えるなら、今いるベテラン社員のこれからも考える。
そんな視点も会社には必要なのではないでしょうか。

会社のためだけではなく、自分の未来のために学んでほしい
学ぶことは、本来、会社のためだけにするものではないと思っています。
もちろん、会社として社員に身につけてほしい知識やスキルはあります。仕事に必要なことを学んでもらうことも大切です。
でも、「会社に役立つから学んでほしい」という理由だけでは、先ほど書いたような“自分から取りにいく学び”にはなりにくいのではないでしょうか。
私自身、経営する側の立場になれば、社員には学んだことを仕事に生かしてほしいと思います。
ただ、そこで一度、自分の子どもだったらどうだろうと考えることがあります。
自分の子どもに、
「会社の役に立つことだけを勉強しなさい」
とは、私は言えません。
もっといろいろなことを知ってほしい。
興味を持ったことに挑戦してほしい。
その中から、自分の得意なことや、これからやってみたいことを見つけてほしい。
働く仲間に対しても、基本的には同じでありたいと思っています。
だから「キャリアをつくる学校」では、今の仕事に直接必要なことだけを学ぶ場所にはしたくありません。
文章でも、カメラでも、マーケティングでも、お金のことでも、新しいテクノロジーでもいい。
本人が「ちょっと知ってみたい」「やってみたい」と思ったことを学ぶ。
その経験がすぐに仕事に役立たなくても、いつかその人の新しい可能性につながるかもしれません。
そして、その可能性が結果として会社の新しい力になれば、それが一番いい。
会社のために人を育てるのではなく、人の可能性が広がることで、会社の可能性も広がっていく。
そんな関係をつくりたいと思っています。

リスキリングは転職のためだけではない。社内で可能性を広げるということ
では、社員が「この会社にいる先にも、自分の未来がある」と感じるために、会社には何ができるのでしょうか。
そのひとつが、今の仕事に必要なことだけではなく、新しいことを学び、社内で自分の可能性を広げられる環境をつくることだと思っています。
最近では「リスキリング」「学び直し」という言葉をよく聞くようになりました。
転職やキャリアチェンジのためのものというイメージもありますが、私はそれだけではないと思っています。
文章を学んだ人が、会社の発信を担当するようになるかもしれない。
人に教えることが得意だと気づいた人が、社内の教育を担うようになるかもしれない。
マーケティングやAIを学んだことが、新しいサービスや事業を考えるきっかけになるかもしれない。
今の仕事だけが、その人の会社でのキャリアではありません。
だから「キャリアをつくる学校」では、会社の業務に直結するものだけを学ぶ場所にはしたくありません。
文章、カメラ、デザイン、AI、お金のこと。
本人が「ちょっと知ってみたい」「やってみたい」と思ったことを、自分で選んで学べる場所にしたいと思っています。
ただし、社員に「学んでください」と言うだけでは十分ではありません。
会社側にも、社員の「こんなことをやってみたい」という気持ちを尊重し、そこで見つかった可能性を、新しい仕事や役割につなげていく姿勢が必要です。
実際、「キャリアをつくる学校を始めます」と社内で発表したあと、社員から「自分もこの取り組みに関わりたい」と声をかけてもらいました。
そのとき、改めて感じました。
社員に意欲がないのではなく、自分から手を挙げて何かに挑戦できる場所が、これまで十分になかっただけなのかもしれない。
普段の仕事だけでは、その人が持っている可能性のすべてを見ることはできません。
会社がいろいろなことに挑戦できる場をつくる。
そこで社員が、自分でも知らなかった可能性に気づく。
そして会社も、その可能性が生きる新しい仕事や役割をつくっていく。
社員が可能性を広げる。会社も、その可能性が生きる場所をつくる。
「キャリアをつくる学校」を、そんな場所にしていきたいと思っています。
これから、この学校からどんな新しい挑戦や仕事が生まれてくるのか。
私自身も楽しみにしています。
ここまで読んでくださったこと、ちゃんとありがたく思っています。また書きます。
この記事を書いた人
野田恒徳|キャリアをつくる学校 企画・運営
株式会社テオリアハウスクリニックで、新規事業・Webマーケティング・人材開発などの企画に携わる。現場・営業を経験した後、社内で複数の新規事業を立ち上げる。自身が学ぶことで仕事や役割を広げてきた経験から、社員が今の仕事だけにとらわれず、自分の可能性を広げられる場として「キャリアをつくる学校」を企画・運営している。