Vol.29 中小企業の採用を、人材育成から考える。人の可能性が広がる会社へ
キャリアをつくる学校を企画・運営している野田恒徳です。
採用について考えていると、どうしても「どうすれば人が来てくれるか」に目が向きますよね。
でも最近、それより先に考えた方がいいことがある気がしています。
この会社に入った人に、その後どんな可能性を広げてあげたり、与えてあげられるか。
20代で身につけたスキルが、60代まで同じように求められるとは限りません。
会社の事業が環境に合わせて変わっていくように、人の仕事や役割も変わっていきます。
そう考えると、会社に必要なのは「今の仕事ができる人を育てること」だけではないのかもしれません。
入社する人たちも、60代まで同じ仕事がしたいなんて考えていません。
キャリアをつくる学校を始めてみて、そこについて少し面白いことが見えてきました。

20代で身につけたスキルが、60代まで求められるとは限らない
仕事を長く続けていれば、経験は積み上がっていきます。
ただ、その経験やスキルが30年、40年先まで同じ価値を持つかというと、そうとは限りません。
会社の事業も同じです。
今売れている商品やサービスが、この先もずっと求められる保証はありません。
だから会社は、新しい事業を考えたり、市場環境に合わせて変わったりします。
人も一緒だと思います。
20代で身につけたことだけで60代まで働き続けるのは、これからますます難しくなるはずです。
そんなことは、たぶん多くの人が分かっています。
でも、分かっていることと、自分から動くことは別なんですよね。
あと、意外と忘れがちなのは人は飽きるってことです。
まったく同じことを30年、40年続けることができる自信ってありますか?

自由参加の人材育成で、「今、動きたい人」が見えてきた
キャリアをつくる学校は、基本的に自由参加です。
始める前は、どれくらいの人が参加してくれるのか正直わかりませんでした。
でも実際にやってみると、誰がどんなことに興味を持っているのかだけではなく、仕事に対して意欲がどのくらいあるのかが見えるようになったことが収穫でした。
普段の仕事だけを見ていると、その人が今の役割以外に何をやってみたいのかは、なかなか分かりません。
参加者の中には、具体的なスキルを向上させたい人もいれば、将来の管理職を目指したいという人もいました。
参加の仕方を見ていると、興味を持つだけでなく、受講したあとに自分なりに試してみる人もいます。そういう姿は、普段の仕事だけでは見えにくいものです。
もちろん、参加していないから意欲がない、ということではありません。
たとえば、恋愛や結婚、子育て、介護などで今はそのタイミングではない人もいると思います。
ただ、参加している人からは、何かを始めてみたい意欲というサインが見える。
キャリアをつくる学校を始めて、これは思っていた以上に大きな発見でした。
経営陣が気をつけなくてはならないのは、こういう人は意欲が高い反面、この会社にいても意味がないと感じれば、途端に意欲が低下、最悪離職してしまう可能性もあるということです。
学べる機会と、新しいチャレンジができる環境を提供していくことが大切ですね。

人材育成が、「次を任せる人」を見つける場にもなる
会社で新しいことを始めようとすると、必ず「誰に任せるか」という話になります。
これまでは、今の役職や仕事ぶり、経験などから考えていました。
でもキャリアをつくる学校を始めてから、そこにもう一つ判断材料が増えました。
普段の仕事とは別のところで、自分から新しいことに興味を持ち、実際に手を挙げている人がわかるようになったからです。
人間には能力の差って、あまりないとはよく言われていますよね。
こういうときは、能力以上に、知らないことでも一度やってみようとする姿勢がとても大事です。
だから今後、会社で新しい事業や取り組みを始めるときには、キャリアをつくる学校でどう取り組んでいたかも超重要だと気づきました。
もちろん、学校への参加を人事評価に使うということではありません。
ただ、今まで見えていなかったその人の一面や意欲の高さを知ることができて、「この人に任せてみようかな」と思える人が増える。
これは、キャリアをつくる学校を始める前には考えていなかった価値でした。

今の仕事だけでは、その人の可能性は分からない
人が辞める理由はいろいろあります。
その中には、「この会社にいても、この先の自分があまり見えない」という理由は結構ある気がします。今の仕事が永遠に続くと考えれば、別の可能性を社外に探したくなるのも自然です。
だから会社の中で、その人の興味や得意なことに気づき、別の役割や新しい仕事につなげられることは、離職を防ぐことにもつながります。
キャリアをつくる学校では、普段の仕事だけでは見えなかった部分が少しずつ見えてきます。
会社の中では、どうしても「今、何ができているか」でその人を見てしまいますよね。
でも、その人が別の役割で力を発揮するかどうかは、実際に機会がなければ分かりません。
人材育成というと、今の仕事をもっと上手にできるようにすることを考えがちです。
今とは違う役割を社内で見つけられることが、この会社で働き続ける理由になる。
そういうことに気づくことができました。

採用でも、「この会社で先が見えるか」は大きい
採用する側の立場だと、どうしても、どうすれば応募してもらえるかを考えます。
でも求職者からすれば、会社を見ながら考えているのは、「ここに入ったあと、自分はどうなっていくんだろう」ということを考えていると思うんです。
実際、応募者の中に、履歴書の志望動機でキャリアをつくる学校に触れてくれた方がいました。話を聞いてみると、講座そのものではなく、「何か新しいことにチャレンジしようとしている雰囲気を感じたんです」と言われました。
じつは、キャリアをつくる学校を始める前から、弊社テオリアハウスクリニックはもともと、そういった姿勢を社内に感じてもらうことが大事だと考えて、新規事業やWebメディアなどにチャレンジしてきました。
おかげで、入社後にある新卒社員に入社理由を聞いた時、「なんかやろうとしているのを感じたんですよね」と言われた経験を思い出し、キャリアをつくる学校が明確な入社理由になるんだと確信できました。
考えたら、古い体質のまま、変化がなさそうな企業に魅力は感じないのは、当たり前ですよね。
こちらは人材育成のつもりで始めたことでも、外から見ると「この会社で働いたら、仕事だけではない何かがあるかもしれない」と感じてもらえる。
そう考えると、採用で伝える会社の魅力は、給与や休日、福利厚生だけではないんですよね。
入社したあとにも、自分の可能性を広げられそうだと思えること。
それも、中小企業が求職者さんや学生さんに伝えられないとダメだと感じる経験でした。

新規事業も人材育成も、余力がなければ始められなかった
私自身、最初から新しい事業を考えたり、人材育成に時間を使えたりしたわけではありません。
最初の数年間は、まず既存事業の業績を良くすることにかなり時間を使いました。
新しいことをやりたくても、今の仕事がうまく回っていなければ、そこに時間も人も使えません。
なので、まずは目の前の事業を良くする。
そこはかなり地道にやってきました。
少しずつ業績が良くなって、自分が既存の仕事から離れられる時間が増えてから、ようやく新規事業のことを考えられるようになりました。
ただ、そこからが大変でした。
新しい事業を考えたり、人に会ったり、調べものをしたりしている時間は、周りから見ると何をしているのかわかりにくいんですよね。
「あの人、最近何やっているんだろう」と思われるようになります。
場合によっては、遊んでいるように見えて、「私たちは大変な思いで仕事をしているのに」という不満を持つようにもなります。
でも、私は結果が全てだと腹をくくりました。
振り返ると、そんなことを繰り返してきた気がします。
簡単ではありませんでした。
でも、私自身はそうやって少しずつ、既存事業の先にあるものをつくってきました。
こうして新しいことに取り組んでいると、始める前には分からなかった苦労もありますし、思いがけない出来事も起こります。
そうした実際にやってみてわかったことも、これからこのブログで共有していきますね。
ここまで読んでくださったこと、ちゃんとありがたく思っています。また書きます。
この記事を書いた人
野田恒徳|キャリアをつくる学校 企画・運営
株式会社テオリアハウスクリニックで、新規事業・Webマーケティング・人材開発などの企画に携わる。現場・営業を経験した後、社内で複数の新規事業を立ち上げる。自身が学ぶことで仕事や役割を広げてきた経験から、社員が今の仕事だけにとらわれず、自分の可能性を広げられる場として「キャリアをつくる学校」を企画・運営している。